健康/health

【就職編】病気のデパート#1

 こんにちは。幸福の天鼠(てんそ)ブログの著者、天鼠です。

 今回から私の過去の体験をもとに、病気のデパートを連載していきますね。「病気のデパートなんてちょっと暗そう」と感じる方もいると思いますが、暗くならずに「世の中にはこんな動物がいるのかぁ~」と動物園に来た感覚で読んで頂けると嬉しいです。噛み付いたりしませんから大丈夫ですよ(笑)

ボールは遠慮のぉ~噛むさかいなっ ワンワンッ

 

 私が始めの病【うつ病】と診断されたのは、2005年10月で25歳を向かえる少し前のことです。そこに至るまでにどこから説明すればいいか悩むところですが、さかのぼり過ぎても間延びしてしまうので、大学を卒業して就職した頃から始めたいと思います。

 2003年春、私は大分県にある大学を卒業してアウトソーシング(業務請負)の会社に就職しました。そして兵庫県にある電機メーカーへ派遣され、自動車部品の設計見習いとして勤務していました。
 大学時代からひとり暮らしをしいたので、地元を離れての独り暮らしには問題なく適応することができました。ですが勤務先の労働環境はお世辞にも快適とは言いがたいものでした。

 毎日深夜まで業務をこなし、その日のうちに帰宅できたのは2年半勤務した中で数日しかありません。残業時間は月100時間を超え、その3割程は残業手当が支給されないいわゆるサービス残業でした。新卒で派遣されてきた私には、それに疑問を感じる思考すら持ち合わせていませんでした。

 また自分と派遣先の従業員との待遇の違いで疎外感を感じ、居心地が悪く、自分がいったい何者なのかわからず悩みました。同期入社という関係性にあこがれ、自分にそれがなく孤独なことで「自分はなんて寂しい奴なんだ」と自己憐憫に陥りました。
 関係性なんか気にせずに、既存のグループの中に入って行けるほど私は積極的でも社交的でもなく、そもそも人との触れ合いを敬遠するタイプの人間でしたから、孤独の輪は広がっていきました。

 私は小さい頃から人見知りで、人とコミュニケーションをとる事を苦手としてきました。いつも世間の目を気にしていたので言いたいこともはっきり言えず、安定した人間関係を長く続けることができませんでした。そのため孤独な状況には耐性があると思っていましたが、今回は少し状況が違っていました。
 身近に家族、恋人、友人など気を許せる人が居なかったことで、職場でもプライベートでも孤独感を嫌と言うぐらい感じていました。そしてその許容量を超えた孤独感を埋める為に、私はアルコールを毎日独りで飲むようになりました。

 毎日深夜に仕事が終わり、疲れ切った体を引きずって狭いアパートへ帰る途中に、コンビニでビールと弁当を買うのがお決まりのコースになりました。アルコールは一時的に私をリラックスさせてくれ、ストレスを和らげてくれました。孤独に負けそうな私に「私は万能で何でもできるんだ」という全能感を与えてくれました。私はアルコールを飲むことで【星取ったマリオ】みたいに無敵になれたのです。

 アルコールは私を社交的にしてくれました。私はお酒に酔うと内向的な性格が一転し、誰とでも仲良く楽しくその場を盛り上げる事ができました。酔うことで人を笑顔にできる自分が私は本当に大好きでした。普段の自分とのギャップを披露するのが私のひとつの楽しみになっていきました。
 飲み会では勧められるがままにお酒を飲み、沢山飲むことで一緒にいる人たちの期待に応えられる喜びを感じました。アルコールは私に特別な力を与えてくれ、人間関係を満喫するために無くてはならない存在になっていきました。もともとアルコールに強い体質ではありませんでしたが、毎日飲酒することで次第に耐性が付き、1度に飲む量はどんどん増えていきました。

 就職して1年が経つ頃には、歓楽街のスナックやキャバクラで飲むことを覚えていました。平日は自宅で晩酌、週末は歓楽街で綺麗なお姉さんと楽しく飲酒という日々を送りました。綺麗なお姉さんと楽しくお酒を飲んでいると、普段小さなことでくよくよ悩んでいる自分を忘れることができました。
 給料は惜しみなく歓楽街で使いましたが、それだけお金を掛ける価値があることだと信じて疑いませんでした。私にとって歓楽街は寂しさを癒し、自尊心を守ってくれる特別な場所になりました。

 この頃になると悪酔いすることが多くなり、頻繁にトラブルを起こすようになりました。スナックで他のお客さんとケンカ、お金を支払わずに帰る、他人の自転車で真夜中にサイクリングなど挙げるとキリがありません。大半は飲み過ぎて記憶が無くなり起こしたトラブルで、職場の方と一緒に飲んでいた場合には、翌週仕事に行くのが死ぬほど気まずかったのを覚えています。自宅以外で飲酒すると、アルコールの量を自分でコントロールすることが難しくなっていました。