愛情/love

この出会いにも感謝を

禁酒をはじめて1か月。まだそんなにたっていない。

それでも心身ともにいろいろな変化がある。頭がしっかり働くから仕事が順調。ジム行って痩せて体が軽い。時間に余裕があるから小説を楽しめる。心に余裕ができていろんなことに感謝できる。…いろいろな変化がある。

自分を大切にできると、自然と良いことが舞い込んでくるから不思議。良い循環のはじまり。

 

よく行く昼キャバで働いていた子が、独立して昼にカラオケ喫茶をやっている。

先週LINEで「無事1周年を迎えられました」と連絡があった。

もう1年たったの?早っ!そしてまだ一度も行っていないぞ。

行きたくないわけではない。でも私は複数の人と一緒にいるのが苦手なの。だからキャバクラの一対一の接客が好みなの。

飲んだくれてる私なら必ずスルーする。でも今回は行ってみようかなって思えた。心に余裕があるから。

しらふで人に会う前、変な汗が多めに出てくる。手のひら足の裏アンド脇。緊張するんです。でも頑張る。

だいたいの場所しか知らなかったのでLINEしたら、LINE電話をくれた。スマホがはじめてのメロディを奏でている。そう、LINE電話の着信ははじめてなの。

そういえば、前キャバ嬢に「鳴ったことないから鳴らして」とお願いしたことがあったな。実践でははじめてってこと。

おそるおそる電話にでる。向こうからは見えているらしい。指示された通り左前のビルの3階を見上げる。娘は体を乗り出して手をふっている。

天鼠
天鼠
落ちるからやめなさい

古びた雑居ビルには大きく「プレジデント」と記してある。プレジデントは日本語で大統領。それと似つかわしくないたたずまいのビルに入る。

エレベーターのスイッチをピッすると、娘が一緒に降りてきた。ドレス姿しか見たことなかったので、パーカー姿は新鮮。違和感だったのは背の低さ。キャバクラではいつも凶器のようなヒールを履いていたので、「こんな小さな娘だったのか」とまじまじ頭のつむじを見下げる。

ビルも雑居だったが、店の中も雑居している。サウナみたいな内装にカウンターとボックス席がひとつ。そして統一感のないインテリア。ところせましとモノモノモノ。自分には絶対にできないので注意深く観察する。

カラオケ喫茶とスナックの違いはわからない。お酒を飲んで歌ってママがいてチーママがいたりいなかったりするヤツです。

すでに居た客ひとりと、娘からママになった子のマシンガントークを聞く。

誰にでも会いたいわけではない。この子だから会おうかなと思った理由がある。酒を飲まないから。元気で明るいから。人を尊重できるから。

お酒に弱い体質で、キャバ嬢のときも飲んでなかった。

禁酒していると、酒酔い人間にイライラさせられることがある。腹立たしいが思考力の低下した人間と話をしてもムダ。自分を棚に上げてもう一度言います。思考力の低下した人間と話をしてもムダ。だから飲酒している人とはなるべく一緒にいたくない。

元気で明るい人間と一緒にいるのは好きだ。根暗な私に元気と明るさを分けてくれる。好きな自分になることができる。

この娘は世間で「せっかち」と言わるタイプ。話すのが早い。動きも早い。普通の人が通常のマリオだとしたら、星取ったマリオ並みにテンポが速い。ドラッグをやっていると思われるそうだ。

そして華奢だ。誰かのタイプに合致する。マシンガントークはなかなか止まらないが、合間で人の話はしっかり聞いている。人の立場にたって考えられる賢く思いやりのある娘。だから会おうかと思った。

マシンガントークを聞く。ママの歌を聴く。

天鼠
天鼠
うまいな

ノンアル気分を飲みながらカラオケを2曲歌う。先に来ていた客にチーズとシュークリームをもらう。こういう場所にくると他の客ともうまくやる社会性が必要になってくる。私は自信がないのだ。だかアルコールで問題をかかえ病院に通っていたと聞くと、他人とは思えない。アル中は酒を飲むとウザくなるが、とても謙虚な方だった。ママに「アル中同盟」と命名され、最後は握手して別れた。

ひとに触ったのは久しぶりだったかもしれない。私はキャバ嬢の太ももとかをスリスリするタイプではないのだ。スリスリおじさんはキャバ嬢とのトークでたまに話題になる。なんとかして触りたいらしい。ひとを不愉快にするのはよくない。触らせてくれる店にいけばいいと思うが、おさわりNGのハードルを超えることに興奮をおぼえるようだ。

シンディ
シンディ
その話いる?

お酒を飲んでいないと自分を大切にできる。そんで自分を大切にしてくれるだろう人と近くなる。そんで大切にされた私は喜ぶ。

会ってよかった。

 

家族、友達、キャバ嬢、自分のとの関係をわかりやすく説明する言葉はある。

でもその一言では不十分過ぎる。関係性はひとつひとつ違うのに、同じ言葉で表現する。その言葉のイメージはみんな少しずつ違う。言葉は役立たず。

言葉も形もない唯一の関係たち、もっと大切にしようと思えた。

この出会いにも感謝を。

 

 

どうか重荷になりませんように…